2021-01-01

謹賀新年





手紙を読みながら  高橋睦郎

ワスレナグサの咲きみだれる庭に
椅子を持ち出して 手紙を読む
読みながら うとうととまどろむ
その手紙を書いたのは いつのたれか
書いた時と書いた人とは忘れられて
(書いた日が昨日で 書いた人があなた
でなければならない理由があろうか)
読む時と読む人も忘れられて
(読む時が今で 読む人がわたし
でなければ なぜならないのだろう)
ただ 光の中に手紙がひろげてある
庭はうとうととまどろんでいる
手紙がまどろんで そして忘れられる

詩集「フィレンツェの春」より