『トイ』Vol.03が届いたのでめくってみると、俳誌名そのまんまの句がありました。
古書市に古き禁書の古りゆき雪 干場達矢
視覚的にも聴覚的にも、切り紙のつなぎ模様を彷彿させる句。この特徴が功を奏し、「古」の語がセンチメンタルな懐旧を寄せつけることなく祝祭的愉悦を放っています。古書に照準を合わせつつ、それを取り囲む群衆の賑わいをソフトフォーカスで描いたところもいいですね。
壜吹きてさびしき音を冬三日月 干場達矢
日常にひそむ心象風景の発見。うん、船の汽笛みたいなあの音はたしかにさびしい。それでいてこの句は「壜」「吹く」「音」「冬三日月」といった語の並びにトイ・ミュージック的軽みがあるので、さびしさが湿っぽくならない。壜と冬三日月との響き合いもタルホ的小宇宙を感じさせます。