2021-01-14

匂いのふしぎ




あいもかわらず海をながめている。流れ星みたいに、飛行機雲が尾を曳いてゆく。

家に帰って手を洗い、スマホやサングラスなどの携帯品を次亜塩素酸ナトリウム液で消毒する。かれこれ一年ちかく、外から帰るたび毎回そうしている。ふわりと軽く漂う塩素の匂いは大好き。毎回毎回、自分でも頭がおかしいと思うくらい本当に毎回、子供のころプールのきもちが蘇って「ああ、なんていい匂いなの!」と口に出さずにいられない。

匂いの記憶がもたらす喜びというのは、 視覚や聴覚とちがって毎日でも全く色褪せないけれど、これって誰しもそうなのだろうか? 

好きな匂いといえば、日焼け止めクリームの匂いも好き。顔に塗るたび胸がきゅんとする。海で泳ぐときのきもちが蘇って。そしてコーヒー豆の香りも、幼いころからずっと嗅いでいるのに、蓋を開けるたびに天上の幸福がひろがるかのような、この上ないきもちになる。