2021-07-26

柳と花の具体詩





高啓の詩「胡隠君を尋ねる」にはファンが多い。

渡水復渡水
看花還看花
春風江上路
不覺到君家

水を渡り また水を渡り
花を見 また花を見る
春風 江上の路
覚えず 君が家に至る

ファンが多いというのはオマージュもまた多いということで、その実例として『カモメの日の読書』では作品をいくつか引いたけれど、また新たに大須賀痩玉の詩「人を訪う 高青邱の韻に次す」を見つけたのでメモ。

柳外柳外柳
花前花前花
行尋花柳路
春色在君家

柳外 柳外の柳
花前 花前の花
行きて尋ぬ 花柳の路
春色 君が家に在り

大須賀痩玉(1846-1878)は漢詩人で、俳人・大須賀乙字の母。「柳のそとの柳のそとの柳/花のまえの花のまえの花」というコンクリート・ポエトリー的なフォルム。それでいてミニマリズム一辺倒にならない、花と柳のかもしだす春爛漫の演出がいい。陸游の詩句「柳暗 花明 また一村」を連想させる光のコントラストも華麗だ。