詩と愛と光と風と暴力ときょうごめん行けないんだの世界この〈きょうごめん行けないんだの世界〉って、いったいどんな世界なのだろうとよく思うのですが、そう思うたびに、なつかしいもの、いとしいものとの決別を、ちょっとだけ想像するんです。柳本々々
とおうぃ とおうぃ あまぎりぃぃす
朝がふたたび みどり色にそまり
ふくらんでゆく蕾のぐらすに
やさしげな豫感がうつつてはゐないか
少年の胸には 朝ごとに窓 窓がひらかれた
その窓からのぞいてゐる 遠い私よ原民喜『永遠のみどり』
原民喜の書く詩は、しずかで、やさしく、うつくしい。愛と光と風がある。けれども、そんな彼が最後にえらんだのは、鉄道自殺という惨死でした。この暴力的な死は、なんだろう。原爆の町で目にしたむごたらしい光景と、そっと重なり生きようとする仕草だったのでしょうか。