2019-02-10

季語を泳ぐ川柳



『晴』第2号は水本石華氏のエッセイ「季語を泳ぐ川柳」がおすすめ。文中「俳句と川柳の中で使われる季語にどのような働き・肌合いの違いが生まれるかを対照してみました」と、自作の俳句と川柳を組み句にしているのですが、それがさりげなくていいんですよ。

「名月」「残」
俳 やり残すこと多かりき今日の月
柳 戦中派にも名月の残り物

「月」「雨」
俳 お尋ねの一碗にある雨月かな
柳 雨になることを喜ぶ月見酒

「桐一葉」「国家」
俳 桐一葉落ちて論ずる国家なし
柳 恥多き天下国家にある一葉

俳柳ともに連句の香りが濃い! なお両者の違いが一番際立っていると思われるのは下の組み句。

「小鳥」「水」
俳 水の香の濃くなる昼や小鳥来る
柳 東京の水で漂白した小鳥

水本氏の書き分けがとても端正なので、どんな方なのだろうと興味が湧いてググってみたら、川柳作家の瀧村小奈生氏や笹田かなえ氏のサイトに佛渕健悟氏の柳号だとあり、さらにググると三省堂『猫の国語辞典』の編者であると知る。はて。『猫の国語辞典』とはなんぞや。Amazonの紹介を縮約すると「江戸から昭和までの俳句・短歌・川柳の作者500名の作品から2400の猫の句を集め、それらを猫の性質や動作などをキーワードに800の見出しをたてて紹介」。うーん、楽しそう。