2020-11-28

冬星とサキソフォン





『ユプシロン』第3号。きれいなレモンイエローの雑誌。今回はいつにもまして好きな句が多かったです。

仲田陽子「レモンの熱」
くろぐろと喪に服したる葡萄かな
大鍋の底見えてくる冬至かな
冬ざるる壁に仮面の息づかい

中田美子「空白」
牡蠣船のとうとう花に囚われし
ふわふわの犬も濡れたり菜種梅雨
筋書きのいくつか混ざる夏の月

岡田由季「天使幼稚園」
観梅へ誘ふ切手の組み合わせ
春眠や本に乗せたる鳥の羽根
水鳥に会ふときいつも同じ靴

小林かんな「自動水洗」
山ざくら木霊ひとつが帰らない
冬星の濃しサキソフォン組み直す
竹ひごの形になってゆく夜長