さっき少しだけ働き、メールを開くと、本の増刷の連絡が来ていた。わーいと思いつつ横になり『おくのほそ道』のページを15分ほどめくる。ベランダに目をやると、かささぎが手すりの上で尾をふっている。えらく大きなかささぎだ。
歌仙「蝶湧く画布」が満尾になった。捌きの冬泉さん曰く「式目的にはいろいろ問題のある一巻ですが、バッドチューニングでずれてる方がいい…と開き直ってます」とのこと。バッドチューニングはわたしのせいです、ごめんなさい。とはいえかなり良さげな短歌もちらほらみえるし、読みどころはあると思う。特に、
この辺りが短歌として好きです。歌仙全体はこちら。
歌仙「蝶湧く画布」が満尾になった。捌きの冬泉さん曰く「式目的にはいろいろ問題のある一巻ですが、バッドチューニングでずれてる方がいい…と開き直ってます」とのこと。バッドチューニングはわたしのせいです、ごめんなさい。とはいえかなり良さげな短歌もちらほらみえるし、読みどころはあると思う。特に、
逆位置の月の雫を浴びながらカードをめくる天気予報士
たそがれの密告に振る香辛料(スパイス)は七つの海をわたる履歴書
静粛に!未来の国の鍵の音グラジオラスを通貨に替へて
おばしまに日傘まはして明石まで神籤が告げる恋の鳴滝
熱(ほとぼり)をさます秘伝の味噌糀あくび伏せたり紅の椀
悠々と紫煙で書いた詩が消えてコスモスを剪るぼくの伯父さん
かたちなき石を尋ねて花の旅 始発は向かふ東風の野原へ
問(とひ)になる 蝶湧く画布を抱きかかへ隻手の声を聴く草朧
この辺りが短歌として好きです。歌仙全体はこちら。
蝶湧く画布の巻
◉初折表
問(とひ)になる蝶湧く画布を抱きかかへ 夜景
隻手の声を聴く草朧 冬泉
砂山が笑ふラジオのチューニング 羊我堂
カードをめくる天気予報士 夜
逆位置の月の雫を浴びながら 冬
鹿棲む森の根の地図たどる 羊
◉初折裏
霧を編む阿修羅迦楼羅にいざなはれ 夜
非を認めない総統の歔欷 冬
たそがれの密告に振る香辛料(スパイス)は 羊
七つの海をわたる履歴書 夜
次のパンゲアの臍にて待ち合せ 冬
鼻高々としくじるパズル 羊
雪をんな抱けば夜汽車は虚空へ 夜
冬の月さす子の後ろ影 冬
静粛に!未来の国の鍵の音 羊
グラジオラスを通貨に替へて 夜
熱(ほとぼり)をさます秘伝の味噌糀 冬
あくび伏せたり紅の椀 羊
◉名残表
胸の戸を叩けばどつと溢れ出し 夜
神籤が告げる恋の鳴滝 冬
おばしまに日傘まはして明石まで 羊
ふたごの螺子をさがしあぐねて 夜
細胞とウィルスの熄まぬタランテラ 冬
アウトバーンに尾を引くライト 羊
きつねしかゐない故郷の祭笛 夜
愚かとふ徳はいづこに 冬
悠々と紫煙で書いた詩が消えて 羊
コスモスを剪るぼくの伯父さん 夜
月へ去る復員船に乗りそこね 冬
露の入江を孤島に仰ぐ 羊
◉名残裏
今年酒交はす合掌造りにて 夜
蝋燭ゆらぐまんだらの宵 冬
おくるみの中の寝息の柔らかさ 羊
雲の切手をしまふ抽斗 夜
かたちなき石を尋ねて花の旅 冬
始発は向かふ東風の野原へ 羊
起首2021年5月22日、満尾同年10月27日