川柳スープレックス「
喫茶江戸川柳 其ノ肆」更新。今月のテーマは桜です。江戸というテーマパークにおける春の光景をマスターに教えてもらいました。
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〈水鳥やむかふの岸へつういつい〉で知られる広瀬惟然に、
水さつと鳥よふはふはふうはふは 惟然
という句がありますが、この「ふわふわ」という表現が気になって古典の使用例を調べてみたんです。そしたらまあいろいろあって、なかでもずば抜けてふわっふわしていたのが、
大友の王子の王に点うちてつぶす玉子のふわふわの関
大田南畝
でした。壬申の乱との関連で知られる不破の関を詠んだ歌ですが、なんと「ふわふわ」に甘みがある! そもそも「ふわふわ」は卵料理とくっつく例が多いのですけれど
板や荒れし寒さを凌ぎ大食いにくべる玉子のふわ/\の関
佐心子賀近
の塩味と並べたら、南畝のカステラ風味がよりありがたく思われます(佐心子賀近の歌はギルさんの『古狂歌 ご笑納ください』より)。また参考までに芭蕉の句を引用すると、
秋風や藪も畠も不破の関 芭蕉
と不破の関でもサビ味です。芭蕉も佐心子賀近も
人住まぬ不破の関屋の板廂あれにしのちはただ秋の風
藤原良経
が頭にあるから、どうしても甘くはならないのでしょう。