2019-04-26

ふわふわの味



川柳スープレックス「喫茶江戸川柳 其ノ肆」更新。今月のテーマは桜です。江戸というテーマパークにおける春の光景をマスターに教えてもらいました。


〈水鳥やむかふの岸へつういつい〉で知られる広瀬惟然に、

水さつと鳥よふはふはふうはふは  惟然

という句がありますが、この「ふわふわ」という表現が気になって古典の使用例を調べてみたんです。そしたらまあいろいろあって、なかでもずば抜けてふわっふわしていたのが、

大友の王子の王に点うちてつぶす玉子のふわふわの関
大田南畝

でした。壬申の乱との関連で知られる不破の関を詠んだ歌ですが、なんと「ふわふわ」に甘みがある! そもそも「ふわふわ」は卵料理とくっつく例が多いのですけれど

板や荒れし寒さを凌ぎ大食いにくべる玉子のふわ/\の関
佐心子賀近

の塩味と並べたら、南畝のカステラ風味がよりありがたく思われます(佐心子賀近の歌はギルさんの『古狂歌 ご笑納ください』より)。また参考までに芭蕉の句を引用すると、

秋風や藪も畠も不破の関  芭蕉

と不破の関でもサビ味です。芭蕉も佐心子賀近も

人住まぬ不破の関屋の板廂あれにしのちはただ秋の風
藤原良経

が頭にあるから、どうしても甘くはならないのでしょう。