2019-04-03

文芸上の貞操観念について




亀井小琴の艶詩について付記。この詩には偽作とする説が存在します。理由は草稿が残っていないこと、平仄に不備があること、そして当時の倫理観の3点。能古博物館だより第41号でもこの件にふれています。地元だけあってさすがに丁寧です。

真偽のほどは今もって不明ですが、私は倫理観はあまり気にならないように思う。だってほら、あの詩は歌の香りが強いじゃないですか。歌だったらあの程度の大胆さなんてちょちょいのちょいだもん。思えば原采蘋「十三夜」も歌の香りのする漢詩でした。こんなのです。

十三夜 原采蘋
蒼茫烟霧望難分
月下関山笛裏聞
吾有剪刀磨未試
為君一割雨余雲

ぬばたまの霧蒼ざむる夜となり迷子のわけをほの語らひぬ
Frontier Moonながるるその笛の音の裏側の月のあかるさ
切れ味をいまだ試さぬ鋏かな研ぎし日のまま胸に蔵(しま)ひて
君がため乙女は裁たむひさかたの雨のをはりのあはれの雲を