2019-07-07

遠くの海を眺めながら




まさか週刊俳句で小池純代さんの都々逸連載が読める日がくるとは。

なかぬ蛍と決めつけられて
人に聞こえぬ声で泣く
小池純代



紀野恵と小池純代はどちらも好きという人が多いけれど、これはとても不思議なこと。だって全然似ていないから。

私の中の紀野は藤原定家の末裔で「句切れ、語句の倒置・圧縮・飛躍、体言句の羅列」といった達磨歌的ダイナミズムが魅力。一方の小池は俳諧歌や狂歌の遺産を受け継いだ歌人で、内に秘められた箴言性が魅力です。近世和歌でいうなら、木下長嘯子や良寛のような異端も連想します。

世々のひとの月はながめしかたみぞと思へば思へば物ぞかなしき
木下長嘯子

あわ雪の中に顕(た)ちたる三千大千世界(みちおほち)またその中にあわ雪ぞ降る
良寛

小池さんの歌は前衛的要素も大きいけれど、そちらは指摘する人が多そうだから、あえて上の二人を引いてみた次第。