2021-09-07

幻のウィンチュン・デビュー





ハイクノミカタの連載は管理人の堀切さんが毎回コラムに適当なリンクを貼ってくれるんです。で、きのう堀田季何さんの句について書いた回をひらいてみたら「白鶴拳」にリンクが貼ってあることに気づき、クリックしたらウィキペディアにとんだんですけど、知らないうちに説明がずいぶん詳細になっていて思わず読みふけってしまいました。「詠春拳と白鶴拳の関係ってこんなにはっきりしているんだな」なんて思いながら。あ。そのくらいのこと知っておけよ!と思った貴方、お願いですからメールしてこないでくださいね。ほんとに知らなかったわけじゃなく完全に忘れていただけですから。ほら、武術って歴史や術理がおもしろすぎてほっといたら口ばかり達者になりがちだし、というか、それ以前にそもそも脳の容量の関係でたくさんのことを記憶しておけないといった事情もあって、なにかひとつ学んだら別のなにかを日々積極的に忘れるようにしているんですわたし。そんな理由で、スイッチを入れて頭の回転数を上げないかぎり大体のことをまるで憶えていないのでした。

ブルース・リーという人に対してわたしはアンビバレントな感情を抱いていているのですが、それでも昔は詠春拳をやってみたくて、パリにいたころ道場を探しに探したことがあるんです。で、ついに見つけたものの、場所がラ・ヴィレットという再開発地区(ジャック・デリダとピーター・アイゼンマンが建築コンペを『CHORA L WORKS』という本にまとめたあの地区)で、時間が平日の夜9時からという悪条件だったので泣く泣く諦めました。当時ラ・ヴィレットの夜は相当危険で、ブログに書けないような暴力事件に巻き込まれた人が周りに何人もいたので、絶対に無理だなと思って。その後ピレネー山脈の方に引っ越したときも詠春拳道場の張り紙を見つけ「とうとうわたしもウィンチュン・デビューか!」と心躍ったのですが、これまたざんねんなことにその張り紙の中でポーズをとっているフランス人が日本の袴をはいていたんですよね。もしかしたら合気道も一緒に教えていたのかもしれないけれど、やっぱりうっとたじろいじゃいます。