2016-10-07

数学者の生態について





高校生の頃、グロタンディークの書いた『孤独な数学者の冒険—数学と自己の発見への旅』という本を図書室で借りたことがある。数学はいつも赤点ギリギリでいまだに高校を卒業できない悪夢を見るくらいなのに、なぜそんな本を借りたのかというと、毎度のことながら表紙カバーがかわいらしくて紙質もたまらなかったから。内容は自伝エッセイみたいな感じ。砂糖キムチのつくり方が載っていたのだけ覚えていて、あとはぜんぶ忘れた。

グロタンディークは超のつく変人として有名だが、一般に数学者というのは変人たることが大いに期待されている稀有な職業である。ただしこの手の夢物語は、じっさいの現実にどのくらいあてはまるのかわからない。

この町にはフランスでもっとも大所帯の数学の研究所があり、そこにはいつもシルクハットと燕尾服で出勤してくる男性がいる。端から見るとたしかに、キテる、というか、イッテる、感は、ある。それで、いちおうその男性に「どうして毎日そんな格好してるの?」と尋ねてみたところ「僕、数学者だから型から入ってるの」との返答。どうやら普通の人だったようだ。

シュレディンガー音頭は夏を「Ψ(プサイ)にΦ(ファイ)」  関悦史