2018-11-23

臍と弓、ふたつの君




組み句2つ、思い出したのでメモ。

秋風や汝の臍に何植ゑん   藤田哲史
秋風や白木の弓に弦(つる)張らん   向井去来

「臍」の若々しい渋好みと、「弦」をかすめる風雅の音。

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君  与謝野晶子
人なしし胸の乳房をほむらにて焼くすみぞめの衣着よ君  『拾遺和歌集』哀傷

『拾遺和歌集』の歌は「あなたを育て上げた胸の乳房。その内側に燃えさかる炎でつくった炭染めの衣を着なさい、我が子よ」の意味で、「としのぶが流されける時、流さるる人は重服を着てまかると聞きて、母がもとより衣に結び付けてはべりける」と詞書が添えてある。「胸の乳房をほむらにて焼く」のくだりは「この手の比喩は悪くない」と藤原俊成が褒めていたような記憶(メモなのであいまい)。