2018-11-05

枕詞使用法(2)





小池さんの歌のように、枕詞と被枕詞との接合に工夫や創造があるものを狂歌本からいくつか拾ってみます。

みよしのゝ山もり雑煮春来ぬと湯気も霞みて芋はみゆらん
玉くしけ二きれ三きれおやわんの雑煮に腹の春は来にけり

酒上不埒『狂歌猿の腰掛』『栗花集』より。酒上不埒は恋川春町の狂歌名です。それから、枕詞を新調するという手もありますよね。

かまぼこのいたく思へは夜は猶日にいくたびか身も焦がれつゝ

作者名は失念しました。時間ができたら調べてみます。あと口調が可愛いこんな狂歌。

久かたのあまのじやくではあらね共さしてよさしてよ秋の夜の月

半井卜養『卜養狂歌集』より。この人はさらりとした歌が多いです。また「ひさかたの」といえば、

久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも

の正岡子規も。子規って俳句より短歌の方がうまいと思うんですが、業界ではどう言われているのでしょう。〈打ち揚ぐるボールは高く雲に入りて又落ち来る人の手の中に〉〈今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸の打ち騒ぐかな〉とか、彼のベースボール短歌はみずみずしくて素敵です。最後に江田浩司『まくらことばうた』から一首。

こもりぬのそこの心に虹たちてあふれゆきたり夢の青馬  江田浩司