2019-09-02

貝殻と薔薇




先日のブログを読んだ方から、フランス語の詩で暗唱しやすいのはありますかと聞かれました。うーん、なんだろう? とりあえず自分が今ぱっと暗唱できるのは2編しかなくて、どちらもシンプルです。

耳  ジャン・コクトー(堀口大学訳)

Mon oreille est un coquillage
Qui aime le bruit de la mer.

私の耳は貝の殻 海の響を懐かしむ

これは定番ですよね。で、もう一つはポール・ド・ルセギエのバラに捧げたソネットで、本によっては「乙女の墓に」なんてタイトルがついていることも。なんと一行が一音節しかありません(全部で14音節なので俳句より短い定型詩ですね)。ソネットの脚韻の仕組みも理解できます(ドイツ語の冠詞の活用を覚える気分にもなれます)。

無題  ポール・ド・ルセギエ(串田孫一訳)

Fort
Belle,
Elle
Dort ;

Sort
Frêle !
Quelle
Mort !

Rose
Close,
La

Brise
L’a
Prise.

いと
美しき
もの
眠る。

脆き
生命(いのち)
傷ましき
死よ。

薔薇は
萎れ、
微風(そよかぜ)

立ちて
連れ
去りぬ。

付記 この詩、実は串田孫一訳はジュール・ド・ルセギエ作となっているのですが、原語で読むとポール・ド・ルセギエ作となっていることの方が多くて、手元の本はどれもそうです(二人は父子の関係です)。どちらが本当なのでしょう?