2019-09-12

抽斗堂 no.34 白いガーゼの扇




抽斗堂no34は白いガーゼの扇。いただきものです。広げるとふわふわして風のよう。机に置くと、扇よりも貝に似ています。

夏あふぎ夜半のとばりを鞣しけり  夜景

* * *

小池純代にマラルメの「マラルメ夫人の扇」を長歌&反歌のスタイルに翻案した遊戯があります。こんなの。

わたしの胸はことだまの 仮の住まひにすぎぬもの
わたしの妻はわたくしの 仮の宿りにすぎぬもの
過ぎてしまへば何もかも 仮でないものあらぬもの
  *
仮の吾妹(わぎも)のその手にゆるる仮の扇よわが心

この反歌は短歌(57577)ではなく都々逸(7775)になっているのですが、言の葉が扇のようにゆらゆらして見えて楽しい。都々逸って、ともすると最後の5音に尻切れとんぼの味が出ますよね。言い切らないうちに終わりが訪れた時は、少し切ない。