抽斗堂no34は白いガーゼの扇。いただきものです。広げるとふわふわして風のよう。机に置くと、扇よりも貝に似ています。
夏あふぎ夜半のとばりを鞣しけり 夜景
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小池純代にマラルメの「マラルメ夫人の扇」を長歌&反歌のスタイルに翻案した遊戯があります。こんなの。
わたしの胸はことだまの 仮の住まひにすぎぬもの
わたしの妻はわたくしの 仮の宿りにすぎぬもの
過ぎてしまへば何もかも 仮でないものあらぬもの
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仮の吾妹(わぎも)のその手にゆるる仮の扇よわが心
この反歌は短歌(57577)ではなく都々逸(7775)になっているのですが、言の葉が扇のようにゆらゆらして見えて楽しい。都々逸って、ともすると最後の5音に尻切れとんぼの味が出ますよね。言い切らないうちに終わりが訪れた時は、少し切ない。