野の色で終はる出逢ひが此処にある 夜景
柳本々々さんの言葉に「川柳は〈さよならの文芸〉である」というのがありますけれど、これってすごく魅力的な命題だなと思います。たしかに川柳は手をかえ品をかえおしまいをテーマにしてきた。
一方、俳句にも挨拶句というのがありますが、これは贈答や応酬の意味合いを含んでおり、ほとんどが日常のご機嫌伺い、すなわち〈こんにちはの文芸〉として機能している。
ここで自分自身を振り返ると、たしかに私も〈さよなら〉を詠むとき、感情をそのまんま私性たっぷりに詠むことってまずないです。で、語るときは遥かなる必然として語る。あるいは絶句という仕草で語る。
だって別れは語りえぬものとして訪れるから。あるいは語りそこねるものとして。
出逢いは対称である反面、別れは非対称です。さようなら、とちゃんとお互いに伝えあえることって、人生でほんとに稀だと思うんですよ。
かぎろひの五言よ永遠に絶句せよ 夜景