2020-02-18

レターズ、みしみし、ユプシロン





往復書簡「LETTERS」更新。第19回は須藤岳史さんの「隠された接続詞」。声の語りと構造の隙、非言語的な起源の世界、言葉との出会い損ね、数字付き低音の空白、見えない接続詞、すべての芸術は音楽の状態を憧れる、ありのままの世界、などなど。上はこちら、下はこちらからどうぞ。

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『Υ』(ユプシロン)2号を読む。1号が届いたときはうすむらさき色の、高級コスメのパンフレットみたいな体裁を見て思わず顔を近づけてしまった(良い香りがしそうだった)のですが、香りはなかったので自分で香水をふって読みました。2号はうすあお色です。

ハンカチに十五番目の石包む  小林かんな
かなかなや他人の住んでいる生家  仲田陽子
鱶の海ロシアより荷の届きたる  仲田美子
鳥の巣に帰り大きく見える鳥  岡田由季

連句誌『みしみし』4号。下の流れが好きすぎました。

風力計も折れんばかりに  天気
欠航を告げられてゐる不倫行  真人
袖すり合ふも蛸壺の縁  りゑ
「韃靼人の巻」

自分の参加した流れでは、ここがお気に入り。

谷合ひの里しらじらと明け初めて  ぽぽな
脈の速さの雪はふりつむ  夜景
大鍋にぼるしちの湯気立ち昇り  苑を
「笹舟の巻」

三島ゆかり筆の浅沼璞『塗中録』評も面白かった。読み応えのありそうな句集です。

学歴もはらわたもなき鯉幟
竹夫人すこし年上かもしれぬ
耳鳴りもちあきなおみも冬隣
腕相撲してゐる影の腕うらゝ
近景の心音となる冬かもめ
浅沼璞『塗中録』