2020-02-09

それぞれのフランス





高遠弘美『物語 パリの歴史』は過不足のない、とてもスマートなパリ案内書。小見出しごとの情報量が適当で、ク・セ・ジュ文庫みたいな読みやすさがある。第一部が「パリの歴史をさぐる」、第二部が「それぞれのパリ わたしのパリ」となっていて、第二部には主要スポット&おすすめレストラン、道や川について、墓地ごとの永眠者リスト、開業年順によるパリの各駅紹介など、旅行ガイドとして役立つ情報が載っている。文章も美しく退屈させない。

この本を読みながら「思えばパリだけでなく、フランスも変わったなあ」と思い出にふけっていると、ちょうど夫が帰宅した。
「今日、職場の友達が『いまのフランス人って深刻なくらいデモしなくなった』って言ってたよ」と夫。
「うん」とわたし。
「ここ20年くらい、ぼろぼろだってさ」
「そうだね」
昔の資料があるかしらと本棚を漁る。すると2004年5月8日に開催されたル・モンド・ディプロマティーク創刊50周年の集会プログラムが出てきた。


このときは、フランスの政治集会の現状をこの目で確かめたくて出かけ、9時間ぶっ通しで観察したのだけど、まず衝撃だったのが会場ホールに7割弱しか人がおらず、空席が目立っていたこと(他の衝撃については割愛)。正直わたしはイラク戦争の直後だったこともあり、この登壇者の顔ぶれならきっと満席だろうなと思っていたので、え、うそでしょ?と驚いてしまったのだった。