2020-02-27

ルーツとの距離感





ゆうべ、日本からの客人とレストランで食事していて、昨日のカルナヴァルが中止になったと知ってびっくりする。それで余計に海辺に人があふれていたのかもと思いつつスパゲッティを食べ、その客人が長年のロッテファンだと言うので平出隆のファウルズにレロン・リーがいたことをお教えすると、今度は向こうが本気でびっくりしていた。

「春」より漢詩部分  吉田一穂

童骸未不焼 哀夜来白雨
蔽柩以緑草 待霽故山春

幼な子の骸はいまだ焼かれずに
哀しき夜を降るにわかあめ
草萌えよ柩を覆いかくすまで
晴るるを待てるふるさとの春



庚戌元旦偶成  鷲巣繁男

地涯呼白雪 青夜発孤狼
幻化司星暦 詩魂老八荒

地の涯 白雪を呼び
青き夜 狐狼を放つ
幻影と化し 星の暦をつかさどり
詩心は老い 地の果てをさすらう

ちょっと前に三文字俳句というのをつくったとき、お名前だけ存じ上げている方から「北国の香りがしました。吉田一穂的な」とのメールをいただいてショックを受けたので、吉田一穂と、あと北海道つながりで鷲巣繁男を訳してみました。自分ではまったく似ていないと思うんですが…。

三文字俳句に北国の香りがするかどうかはさておき、吉田一穂や鷲巣繁男、あと安部公房あたりの空気はすごくよくわかります。地元の懐かしい香りです。とはいえわたしにとって書くとは〈ゆりかご〉から出る営みなので、俳句をつくるときは極北的な感性とは冷静な距離をもって向き合いたい。これは以前こちらあちらに書いた〈闇との決別〉と一緒のことなんです。