2016-11-11

『フラカン』解体、そして恋心



先日ある人が、あなたの『フラワーズ・カンフー』に入っているこの句が好きですと言って口ずさんでくれたのだが、どういうわけかそれが俳句ではなくて短歌だった。俳句と短歌の区別がつかなかった、という話ではない。そうではなく、その人はわたしの短歌の、きっかり上の句だけを口ずさんだのだった。

こういうのは初めての体験である。それで、し、しものくは?とおそるおそる尋ねると、これ、下の句は要らないんじゃないっすかね。だいじょうぶですよ、なくて。じゅうぶんガソリン入ってます、とのご意見。わたしは、そうか、そうなんだ、そうかもねーと笑いながら、その人がじぶんの好き勝手に『フラカン』を解体して読んでくれていることがうれしくて、心のなかでひゃっほーと踊る。

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くりかへしくりかへし聽くいちまいの音盤(ディスク)のごとき戀心かな  小池純代

連作「11月のヴァリエテ」より。レコードの素敵なところはくるくる回っているのが目に見えるところ。恋をしたら、くるくるまわりたい。アホっぽく。レコードはたまに、ちゅん、と音がとんでしまうところもかわいい。掲歌は「くりかへしくりかへし」の部分に、始まりを花咲くようにリピートしたい気分と、音のたわむれを終わらせたくない気分とが強く出ていて、こういう恋心って、うーんすごくわかるよ。