2017-09-10

天の記憶





本日のスピカ「かたちと暮らす」で言及した映画《La vita è bella》はアレッツォが舞台。この町のサン・フランチェスコ教会にはピエロ・デラ・フランチェスカのフレスコ画「聖十字架伝説」が保存されています。

自分がピエロ・デラ・フランチェスカを意識したのは1990年の冬。部屋で勉強しながらNHKFMシアターを聞いていましたら有元利夫の話が出てきまして、それが気になって本屋で画集を購入し、そこから初期ルネサンスに行ったという流れでした。

ところでこの二人、どちらも色彩と質感が素敵ですが、似ているようで全然似てないところが面白いですよね。ピエロ・デラ・フランチェスカの絵は平明で大胆な形態把握、緻密な構図と細部の描き入れ、クール&ビターな人間の表情などが観る者に甘美な幻想をもたらす一方、有元の絵はあいまい、省略、スイートなどがその特徴。和やかな音楽に満ちていて、壮麗な静謐さからも割と遠いですし。

木の板のうすくひびくは鳥雲に  小津夜景
(「そらなる庭に ピエロ・デラ・フランチェスカによせて」)