愛しい本は、見た目のたまらない本。
写真の『現代フランス戯曲選集』は10年くらい前、パリの古本屋街で投げ売り同然だったのを、この本の辿った道が偲ばれるような鈍い光沢にぐっときてアパートに連れ帰った。ダーラヘストが映り込んでいるあたり、落としきれていない黒の靴墨がよれて固まった感じのボロさである。ちなみに中は一行も読んでいない。風通しのよい場所で、のんびり余生を送ってほしい。
背表紙はかなり色褪せている。その隣の本は黄色い布の質感に惹かれた『ゲーテ全集』。ケルンの本屋でみつけた。こちらも一行も読んでいない。ドイツ語だから。