2016-08-23

謎彦と水の対位法



今日は謎彦の俳句を読もうかなと思っていたのだけど、やっぱりその前に他の作品を見ておくことに。

下の引用は「対位法練習曲」という作品の第二楽章。漢詩を連句風に翻案したらしい。謎彦本人による注釈には「紀野恵さんの連作短歌『君を尋ぬる歌』は、この詩の一字一字を冒頭に置いた合計20首から成っており、そちらで既におなじみの方もおられるでしょう」とある。

ブログでの書きぶりを見るかぎり、おそらく謎彦はかなりの紀野恵愛好家で、わたしが謎彦のブログをたまに見にゆくのは、実はそのことが関係している。小声で言うが、以前わたしは「流体領域 西原天気『けむり』を読む」という書評を週刊俳句に書いたことがあり、その折に「水と時間」なるタイトルの「君を尋ぬる歌」をめぐるエッセイをおまけとしてつけた。全くもって書評にそんなおまけが要るのかといった話だが、つまりわたしも相当な紀野恵愛好家なわけであります。

II Andante

高啓「胡隱君を尋ぬ」

渡水復渡水 水を渡り 復(ま)た水を渡り
看花還看花 花を看(み)  還(ま)た花を看る。
春風江上路 春風 江上の路
不覺到君家 覚えずして君が家に到る。

春水を三段とびにわたるかな   謎亭
花のむかうは花またも花     彦麿
散るままに一力茶屋へ吹きよせて 謎亭
ふいと出くはす当家の家老    彦麿

さらりとして素敵。『幻 ~Do Minamoto Yourself~』とは全然違う。

ひとつ追記。わたしが引用する謎彦の作品はすべて、はるか昔に彼が運営していたサイトにあったもの(わたしはそのサイトを全ページ印刷して持っている)。彼は『塔』所属(だった?)らしいので、作品を紙媒体で読んでみたい方は『塔』に連絡をとればなんとかなるのではないか、と思う。