2016-08-29

シュールとまどろみのあわいで





これまでに少なくとも2度、他人の作品の息づかいを自分の句に取り入れようとしたことがある。

シュールレアリズム昼寝をしてゐたる  中山奈々

ひとつはこれ。一読した瞬間わっと思った。なんて素敵なの。どうにかしてこれと同じ雰囲気で、このくらいゆらゆらした句が自分にもつくれないかしら。そう思い、この句のどこがツボなのかをざっと整理してみたら、こんな感じに。

印象的な固有名詞が冒頭を占拠し、しかも堂々たる風格で初句からはみでているところ。

「シュールレアリズム」と「昼寝」とが隣りあうことによって醸し出される、まどろみのオン・エアー(=宙をさまよう)感覚。

堂々とはみでちゃう感じ。うとうとのオン・エアー。なるほど。たしかにこれは自分好みだ。よし、つくってみよう、と。

こうした経緯により、それから数日の間、わたしは〈印象的な固有名詞が風格をもって初句からはみでている、超現実主義とまどろみとのあわいに浮かぶ俳句〉をもとめて遠い世界に意識をあそばせつづけた……というとなんだか凄そうだが、単にいつも以上にぼーっと暮らしていた。そうしたら、ぽこっと下の句が生まれた。

しろながすくぢら最終便となる  小津夜景

静態性のつよい「シュールレアリズム」とうってかわって「しろながすくぢら」はかなり動態的な句になった。またそのせいで作品の色が別物になってしまった。でもこの句はまぎれもなく中山奈々の句に感銘を受け、それを自分なりのやり方で真似することで形となった言葉だ。