フランス映画『大頭脳』にはコケティッシュなしっぽの似合いそうなお嬢さんが出てくる。
このシーンの美点は、ル・アーヴルの柔らかく儚い陽ざし。キュートな女の子がロープ技と絵に描いたようなお色気を披露するところ。カザール・カーンの大ヒット商品である空気椅子。その椅子に腰掛け、ぷかぷかとプールに浮いている男たちのなさけない姿。そしてカテリーナ・カゼッリの、強さと明るさと大衆性を備えた歌声。
百日、百時間、あるいは
百分をあなたがわたしに与えてくれるなら、
一度の生涯だろうと、百度の生涯だろうと、
わたしはあなたにそれを捧げ返す。
Cento giorni, cento ore, o forse
cento minuti mi darai;
Una vita, cento vite,
la mia vita in cambio avrai.
歌詞の翻訳(あまり信用しないでください)に原詩をつけてみたのは、これがカラオケでも親しまれている曲だから(ニース人はイタリア語の歌をよく知っている)。たしかにイタリア語を全く知らない自分でも、いちど聴けばなんとなく口ずさめてしまう。老若男女に訴えかける歌謡曲の香りも強烈だ。
コメディー映画の「笑い」は開放的なフィーリングに満ちていてほしい。たとえどんなに深く鋭かったとしても、生命力にとぼしい「笑い」というのは絵に描いた鳥に「自由」と名づけるようなものだから。