2016-09-01

棘のあるお嬢さん



学生の頃、たまたま「ELLE」を開いたらマルグリット・デュラスのロング・インタビューが載っていた。

文中、唯一記憶しているのは「あなたの書斎からは海が見えませんね」というインタビュアーの質問に対し、デュラスが「わたしは一日中海を見ているような人間じゃないわ」と答えていたこと。それを読んだ当時のわたしは「なんなの、この奇妙なやりとり。海ってそんな何かの本質に関わるものなの?」とこれっぽっちも意味を解さなかった。

あれから20余年の歳月が経ち、いつの間にかじぶんが海ばかり見ているような人間になってしまっていることに驚いている。なるほど、こういうことだったんですね。


それはそうと、モナコの海洋博物館はアクアリウムが本物の海とつながっている。そして水槽をデコレーションする水中造園家の仕事がすばらしい。岩と植物の、考え抜かれた配置。造園家が水槽内のランドスケープを決め、じっさいに造形してゆく作業が館内のヴィデオで流れていたのだが、色とりどりの苔を寄せたブーケの上をほのぼのとゆきかう魚たちを目にして、こんな村で人生を送ることができたら、と震えてしまった。


とりわけ気に入ったのが、この写真でたくさん泳いでいる「棘のあるお嬢さん」という名のスズメダイ科の魚。すごくコケティッシュ。しっぽが。