2016-09-30

江川卓と、とまどい。



カンフー目線で見てわくわくするプロ野球投手というのが昔はやたら多かった気がする。村山実とか、稲尾和久とか、江川卓とか。江川くらいになると映像も豊富なので一時期むさぼるように見ていたのだが、足腰に精度の高いゆらぎがあり、粘りと伸びとが抜群で、球が手から抜けたあとの仙骨の当たりがふわっと柔らかい。投げ終わったあと動作に余韻がたっぷり残るところや、合気のような敵との間のはずし方にもきゅんとくる。

そんなわけで、夫が家にいない夜は「さて。江川でも見るか…」とヴィデオを流しつつ武術の稽古をする。夫が家にいる夜も、ざっと年に4、5回はお世話になっているはずだ。達人の身体運用を観察しながら体をうごかすと、自分のパフォーマンスもそれにひっぱられて猛烈に上がるのがわかる。怖いくらい。

わたしの煩悩と身体を煽るという意味でこのように完璧な江川ではあるが、弟子になりたいかと訊かれると正直とまどう。江川が師匠というのは、なんとなく想像したくないシチュエーションだ。だからきっとそういう時は「いえ、郭泰源さん、とかの方がいいです」と答えるのではないか。日和って。